NON JOHNの酒の肴#2 NON JOHNの錫の器が芽吹いた日。酒を呑んでいたら鋳造することになった話

NON JOHNの酒の肴#2 NON JOHNの錫の器が芽吹いた日。酒を呑んでいたら鋳造することになった話

このニュースレターは「to savor alcohol more(より深くお酒を味わうために)」をスローガンに活動するガレージブランド NON JOHN の活動やお酒に関するあれこれを発信するものです。このニュースレターを読んで、粋な酒客を共に目指しましょう。

2024/2/7

目次

    🍲 NON JOHNの錫の器が芽吹いた日。酒を呑んでいたら鋳造することになった話

    2023年秋、それらに出会ったのは旅先で訪れた二次会のお店。
    それはカウンターに行儀よく置かれた二つのおちょこ。一つはチューリップの蕾のような形、もうひとつは逆さ富士のような形。

    それらを”作った”という先生が、隣の席から「飲み比べてみな」とおっしゃった。それぞれで呑んでみると、確かに味が違って感じる。感動と表現してもいいようなとても新鮮な驚きがありました。
    呑んでいたのは青森県の日本酒で、フルーティな香りの中にキリっとしたキレがあるおいしい味わい。蕾のように内側に湾曲しているおちょこで呑むと、甘い香りが喉のあたりにひろがる。逆さ富士のように開いているおちょこで呑むと味のキレがクリアに感じる。ぬる燗にするとまた味の違いが顕著に。
    吞み口の角度でもお酒の味が変わるのか、という新しい発見に心がときめき、味の違いを感じながらゆっくりと楽しみました。お酒の味がフチの厚さで変わることは知っていて、その認知の元にHenshinを作った我々が、この二つの特徴をあわせもつおちょこを発想したのはごく自然な流れでした。
    それらのおちょこは鋳造品。鋳造とは金属を溶かして型に流し込むこと。

    Youtubeで探してみると、どうやらおちょこを作るための鋳造は大掛かりな設備がなくてもできそうだということがわかりました。そしてこの新しいおちょこを自分たちで生み出そうと、お酒の勢いで決意。
    しかし素人目にたやすく思えた鋳造は、やればやるほど奥が深く、深みにはまって抜け出せなくなり…。一旦それっぽいのができて喜び乾杯に至るものの、使っていると欲が出てきて、もっとキレイに作りたくなり、他の人たちにも使ってほしくなってきます。
    そうなると金属を流し込んで入れるだけの話ではなくなってきます。
    • いかに元の型(原型という)をキレイに作るか
    • いかに鋳型を効率的に作るか
    • いかに量産に耐えうる工程にするか
    • 量産後の販路・包装・体制をどうするか
    こういった諸々を考えながら行ったり来たりしてはや幾月かが経ち、どうにかようやくものになりつつある今日この頃。いまでは鋳造について少し話せるくらいになってしまいました。 次節ではその成果をご紹介します。

    👄 味覚の不思議。Nitoryuのご紹介

    酒の場の思い付きから鋳造にのめりこみ、艱難辛苦と試行錯誤を繰り返し、ようやくできたプロダクト。
    Nitoryu/Choco

    フチが左右非対称のおちょこです。角度によって異なる味わいを楽しめます。一方が鋭角、もう一方が鈍角で、同じお酒も異なる角度で味わうことで、その違いを感じることができます(実用新案登録済)
    読んでのごとく「二刀流」が名前の由来。いまやメジャーベースボール界では大谷選手のおかげで英語でも通じるようになったこの言葉。大谷選手のように世界で認められてほしい。
    素材はスズです。スズは食品に安全で、加工しやすい金属で、古来から高貴な食器や酒器として用いられてきました。
    また、スズは化学的に安定しており、健康を害することはありません。それどころか健康増進作用や経験的に飲料をまろやかにする特性を持っているといわれています。科学的にはいまだ謎らしいのですが(そのうち解き明かされてほしい)
    表面はお酒と器の接触面積を広げるために、意図的に粗く研磨しています。この処理によって他の錫製品とは一味違う外観と、手・口への触感が生まれました。こちらの感触も楽しんでいただけると思います。
    とある酒蔵の会長に試してもらったところ、高評価で「これどこで売ってるの?」と聞かれました。 予定しているクラウドファンディングでのリターンとなります。
    是非応援いただけると嬉しいです。
    次回もNON JOHNのプロダクトのご紹介も含めて綴ってみたいと思います。

    🍨 余談

    なんとこの原稿を書いている2月、SAPPOROからザ・パーフェクト3WAY グラスというビアグラスが発表されました。奇遇というかなんというか。「飲み口で味が変わる」をひとつにした、Nitoryuと同じコンセプト。こっちは2WAYですけど。
    後出しだろうといわれるかもしれませんが、実はこういったデザインも当初候補として考えました。しかし、発想が鋳造のおちょこ出発だったのでおちょことしては形がいまいちだと思ったのと、実用性(重ねられない)と生産性(鋳造だと工程が大変)が備わってないのでいまの形にしました。
    でもこの形のビアグラス、美しいですね。製造工程を見てみたい。 デザインしたのは佐藤オオキさん率いるnendo。佐藤オオキさんと同じ帰結になるとは。複雑な気持ちもあるけどなんか嬉しい気がしなくも…。

    🥢 肴のオマケ

    この「肴のオマケ」はNON JOHNの活動での裏話やお酒に関わる何かを紹介していきます。今回は「なぜ我々は酒に心惹かれるのか?」です。

    🍺 なぜ我々は酒に心惹かれるのか?

    人類の歴史はお酒とともにあります。 少なくともいまから9,000年前にはすでにお酒を作って飲んでいたらしい。
    古代エジプトではビールがピラミッド建設の労働報酬として与えられていました。古代ローマのユリウス・カエサルもハチミツ酒やワインを飲みながら歴史を変える一手を打ち、幕末の志士達も酒を酌み交わしながら新しい日本の夜明けを語り合った。に違いありません。
    そもそも我々はなぜお酒を飲むのでしょうか?なぜお酒が呑みたいのでしょうか?本日の肴のオマケはそこらへんについて、諸説あるのは承知の上で書いてみました。お酒を飲みながら気楽にどうぞ。

    🌎 酒はどこからやってくるのか

    アルコールは水酸基というNON JOHNのロゴにも組み入れているコレ

    (-0H)の構造部をもつ物質の総称です。ホニャララオールみたいな名前の物質がアルコールです。そしてその中の"エタノール"というものがいわゆる”お酒”になります(以下エタノールのことをアルコールとして話を進めますが、同じ"アルコール"でもメタノールは絶対に飲まないように。失明したり死んだりします☠)
    このアルコールは、果実や草木をはじめ自然界のそこかしこにいる"酵母(イースト)"という微生物が主に生み出しています。アルコール発酵と呼ばれるもので、ブドウ糖や果糖などの糖を分解してアルコールを作っています。「作っている」と表現すると能動的に作っているような感じですが、実際は欲しくて作ってるわけではなくて、糖を分解したときの副産物として出てくるというのがほんとのところ。
    そもそもなぜ糖を分解するのでしょうか?それは生きるのに必要なエネルギーを得るためです。アナロジーを使えば、動物が肉を食べて糞を排泄するように、酵母は糖を食べてアルコールを排泄しているのです。
    このアルコール、自ら生み出したはいいものの、毒性があるので体外に排出します。そうすると、この排出したアルコールがその毒性で周りの競争相手の微生物をバタバタと倒し、アルコールを吐き出している酵母はおいしい果実(糖)を独占することができるようになりました。
    そうなるとより攻撃性のある高い濃度のアルコールを排出できる個体が生存競争に有利となり、世代を経るごとにその能力は強化されました。進化の過程で果実をアルコールまみれにできる酵母が選び抜かれたのです。

    😊 やがて集団は酔いどれに

    酵母がアルコールをなぜ作り出しているかを追ってみましたが、なぜ我々ヒトはアルコールが好きなのか、という最初の問いに戻りましょう。それに回答するには人類の祖先がまだ小動物だったころまで時をさかのぼらなければなりません。
    我々の祖先は果実を食べていました。当然、生きていくためには誰よりも食べ物に早くたどり着かねばなりません。そこで頼りにしたのが匂いです。
    食べごろに熟れた(糖分の多い)果実は酵母によってアルコールにまみれになっており、アルコールは香りとして放たれています。これを探知できた方が有利です。この香りを「いい匂い」として感知しする「アルコールの匂いが好き」な個体にメリットが生まれ、祖先はその能力を伸ばす方向へと進化しました。
    (余談ですが、交通標識などの「危険」や「注意」他、大事なポイントが赤や黄なのは、ヒトがそれを検知しやすいからなのですが、それらは熟れた果実の色であり、色を認知する能力を獲得した後にその色に気が付きやすい(見つけやすい)様に進化したからだとする説があります。同じように宝石などのキラキラツヤツヤしたものを貴重だと思い惹かれるのも、潜在的に水を想起するからで、飲食のための本能が我々の認知の根幹を司っているというのは面白いし、妙に納得するところです)
    そして、果実にありついた時、アルコールにより強い耐性を持つ個体が、より多くの果実を食べることができ、そうでないものは生存競争に負けていきました。
    アルコールに比較的強い特性をもつものの子孫が繫栄し、その子孫らはアルコール耐性を引き継いでいるので、時を経るとともにその集団は全員がアルコールが好きかつある程度摂取可能な集団となっていったのです。
    ようやく結論。なぜ我々はそもそもアルコールが好きなのかという問いへの回答は「アルコールを好む進化を経たから」。お酒が好きなのはただの嗜好でななく、遺伝子に刻み込まれた我々の根源的な性質なのです。
    (下戸もいるじゃないか、と思う方もいらっしゃると思いますが、下戸の方々は大昔、アフリカから出発したと言われる人類が東アジアまできた頃にお酒を飲むのに必要な能力を欠失してしまったことが要因といわれています。この話もいずれ書いてみたいと思います)
    この性質の上に、お酒を「いいもの」として取り入れた社会・文化が発展し、その環境に影響に影響されてさらにお酒が好きになる、という循環でホモ・サピエンスの酒好きはとどまるところを知らない世界を拓き、いまも拓き続けているのです。
    ここまでお読みいただきありがとうございました!
    ご意見・ご要望がありましたら以下からお寄せください。NON JOHNは褒められて伸びる特性ですので、できるだけポジティブな内容で、ご批判や誤りの訂正等がありましたら優しい口調でお願いします!
    ウェブサイト: non-john.com

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